日経平均銘柄入れ替えのイベント投資 – インデックス買い

 

日経平均株価の構成銘柄は一年に一度、定期見直しで銘柄の入れ替えが行われます。

2015年は、10月1日の日経平均株価算出からDeNAと長谷工が新規採用され、日東紡と平和不動産が除外されました。

この日経平均株価の構成銘柄の入れ替えは「イベント」です。

そして、このイベントに合わせて入れ替え対象となった銘柄には、決まったタイミングで間違いなく機関投資家による買い/売りが入ることが分かっています。

この年に一度のイベントに合わせた「イベント投資」について今年の採用銘柄DeNAと長谷工を事例にご紹介します。

日経平均株価の構成銘柄入れ替えとは?

日経平均株価は、日本経済新聞社によって選ばれた225銘柄の株価から算出されます。

この225銘柄の中から毎年1〜3銘柄程度が入れ替えられるというイベントがあります。
#ただし、2014年は定期見直しによる入れ替えはなく毎年必ず発生するとは限りません

定期見直しによる入れ替えを行う理由は、一言で表すと日経平均という日本を代表する指数として適切な構成銘柄を維持するためです。(流動性などの観点から判断されます)

#日経平均株価の算出ロジックについて詳しくは先日投稿した記事「日経平均株価の歪な算出方法(みなし額面)」をご覧ください。

入れ替えの発表時期と実施時期

日経平均株価の構成銘柄の定期見直しによる入れ替えは、毎年8〜10月頃に行われます。

2015年の場合、
・9月4日:入れ替え発表(DeNAと長谷工が新規採用、日東紡と平和不動産が除外)
・10月1日:構成銘柄の入れ替えを実施
となります。

ポイントは、発表から実施までのタイムラグです。

発表後から入れ替え実施までも取引されますし、入れ替えに備えて準備(仕込み)も行えるということです。

入れ替え時に発生する機関投資家による大量の買い/売り

ここまで日経平均株価の入れ替えについてご説明しましたが、ここからが本題です。

この入れ替えに伴って何が発生するのか?

入れ替え実施(日経平均株価算出への組み入れ)の前日の大引け
・採用銘柄:機関投資家による大量の買い注文
・除外銘柄:機関投資家による大量の売り注文
が発生します。

つまり、今回の入れ替えだと、10月1日から組み入れられるため、前日9月30日の大引けに、新規採用銘柄のDeNAと長谷工には大量の買い注文が、除外銘柄の日東紡と平和不動産には大量の売り注文が機関投資家から出されました。

これを「インデックス買い」「インデックス売り」などと呼ぶことがあります。

何故、インデックス買い・インデックス売りが発生するのか?

インデックス買い・インデックス売りは、機関投資家による売買です。

この機関投資家というのは、主に日経平均株価に連動を目指す投資信託、つまりファンドのことです。

具体的には、
・日興アセットマネジメントの「
・DIAMアセットマネジメントの「日経225ノーロードオープン」
・みずほ投信投資顧問の「MHAM株式インデックスファンド225」
・ニッセイアセットマネジメントの「ニッセイ日経225インデックスファンド」
などです。

これらの投資信託は、日経平均株価に連動を目指した運用を行いますので、日経平均の構成銘柄変更に合わせて、ポートフォリオの組み替えを行います。

具体的には、除外銘柄を売却し、採用銘柄を購入する、ということです。

#ただし、この際、単純に売却代金で採用銘柄の株式を丸々購入するのではなく、日経平均株価の算出ロジックに基づき、構成率に合わせてポートフォリオ全体を見直します。

そして、この「除外銘柄の売却」と「採用銘柄の購入」は、入れ替え実施の前日に行われます。

それも基本的には「大引け」です。

この取引(インデックス買い・インデックス売り)は、日経平均連動の投資信託は「機械的に実施せざるを得ない」ものです。

このポートフォリオの組み替えを行わないと日経平均に連動しなくなってしまいます。

インデックス型投資信託は、組入れる銘柄について割安・割高を判断せず、ただ目標としている指数に連動するようにポートフォリオを調整しているだけです。

つまり、銘柄の入れ換えが起こると必然的に発生するイベントです。

日経平均構成銘柄の入れ替えイベント投資のセオリー

上述の特徴から、日経平均構成銘柄の入れ替えというイベント投資のセオリーは、以下の通りです。

■除外銘柄

除外銘柄は、発表直後に売られます。

これは、インデックス売りが発生すると分かっているため、約1月後に発生する機械的な売り圧力を嫌気しての売りです。

その後、除外される前日の大引けにインデックス売りが発生します。

このインデックス売りに便乗する形で空売りをしておき、大引けや翌日以降に買い戻すという投資手法もあります。

そして、除外された日には、機械的に売られてしまった反動で上げに転じると想定し、除外前日の大引けに買って、翌日以降に売るという方法もあります。

■採用銘柄

採用銘柄は、除外銘柄と反対の動きです。

まず、採用されることが発表されると、インデックス買い期待から買われます。

その後、採用される前日の大引けにインデックス買いが発生しますので、予め仕込んでおいてこのインデックス買いで売るというパターンになります。

また、機械的に発生した大量の買いによって株価が上がる(と想定される)ため、その反動で株価は反落すると読んでインデックス買いのタイミングで空売りをかけ、翌日以降に買い戻すという投資も考えられます。

■注意点

日経平均株価の構成銘柄入れ替えに伴うイベント投資のセオリーとしては、このような手法が一般的に紹介されています。

ただし、信用取引のつなぎ売りによる株主優待のタダ取り手法と同じで、このイベント投資手法が広く知られると、インデックス買いに対して大量の売りがぶつかって、株価に動きなし、という可能性もあります。

実際、後述しますが、2015年の新規採用銘柄DeNAと長谷工は売り圧力が大きく、株価は上がりませんでした。

インデックス買い・インデックス売りの規模は?

上記で例示したインデックス買い・インデックス売りを行う日経平均225連動の投資信託の純資産額は10月1日時点で、
純資産額2,264億円
・日経225ノーロードオープン:純資産額1,694億円
・MHAM株式インデックスファンド225:純資産額1,543億円
・ニッセイ日経225インデックスファンド:純資産額990億円
となります。

その他にも日経平均225連動のインデックス型投資信託は多く存在し、純資産額が100億円単位の投資信託がまだまだ存在します。

つまり、日経平均株価に連動を目指すインデックス型投資信託の運用資産額は8,000億円程度と見込まれます。

さらに今人気のETF(上場投資信託)の中にも日経平均株価への連動を目指す上場投資信託があり、その資産額は、
・野村アセットマネジメントの「日経225連動型上場投資信託」で2兆9,779億円
・日興アセットマネジメントの「上場インデックスファンド225」で1兆4,728億円
・大和証券投資信託委託の「ダイワ上場投信-日経225」で1兆3,440億円
など、6兆円を超える規模です。

#ETFは「現物拠出型ETF」の場合、証券会社や機関投資家が集めた株式を運用会社に拠出する仕組みのため、通常の投資信託(ETFではない投資信託)とは日経平均株価の銘柄入れ替え時の動きが異なる可能性があります。

そして、日経平均株価の構成率10月2日時点で、
・DeNAが0.15%
・長谷工が0.06%
です。

従って、単純計算ですが、日経225連動のインデックス型投資信託の運用資産を8,000億円とすると、
・DeNA:12億円のインデックス買い
・長谷工:4.8億円のインデックス買い
が発生する計算です。

日経225連動のETFの運用資産6兆円も同様の計算をすると
・DeNA:90億円
・長谷工:36億円
です。

#先述の通り現物拠出型ETFの資産運用は複雑なため、通常の投資信託とは動きが異なる可能性があり、単純計算は恐らく不適切ですので、あくまでも参考値です。

DeNAと長谷工のインデックス買いを振り返る

9月30日の大引けに実際に発生したインデックス買いの規模を確認してみましょう。

■DeNAのインデックス買い規模

まず、DeNAです。

DeNAのインデックス買い規模

9月30日の大引けに出来高が膨れ上がっています。

少し見づらいですが、9月30日大引けの出来高は約600万株です。

出来高は、
・9月28日:1,917,900株
・9月29日:2,881,900株
・9月30日:14,738,000株
・10月1日:4,551,800株
・10月2日:1,519,500株
でしたので、この大引けに発生した約600万株という出来高の大きさが分かります。

なお、終値が2,219円でしたので、600万株は、約133億円の売買代金に相当します。

■長谷工のインデックス買い規模

続いて長谷工コーポレーションです。

長谷工コーポレーションのインデックス買い規模

こちらも少々見づらいのですが、9月30日大引けの出来高は約500万株です。

出来高は、
・9月28日:3,120,300株
・9月29日:4,294,500株
・9月30日:12,884,500株
・10月1日:7,228,400株
・10月2日:3,816,900株
でしたので、約500万株という出来高はやはり大きいことが伺い知れます。

なお、終値が1,350円でしたので、500万株は、約68億円の売買代金に相当します。

■振り返ってみて

このように振り返ってみると、日経平均連動の投資信託とETFの想定買い規模の合算値+αに見えます。

なお、長谷工について「大和証券では400万株程度の買い需要と試算していた」とフィスコで報道されていますので、大きくは想定通りと言えるのかもしれません。

ただ、大引けでの「売り」が非常に大きかったため、株価は上がりませんでした。これだけ突出した買いを全て吸収してしまいました。

敢えて株価を低く抑えたい機関投資家がいれば別ですが、そうでなければ、上述のセオリー通り、
・事前に仕込んでおいた株式をインデックス買いにぶつけて売った
・インデックス買いで高騰して翌日は反落すると踏んで空売りをかけた
の2つの「売り」が集まったのかもしれません。

なお、日証金の貸株残高を見ると、DeNA・長谷工ともに、9月30日、10月1日に新規貸株が多く発生し、10月2日には返済されています。

▼DeNAの貸株残高(日証金)#2015/10/2は速報値
dena-kashikabu
▼長谷工の貸株残高(日証金)#2015/10/2は速報値
haseko-kashikabu

 

インデックス買い・インデックス売りのポイント

改めて日経平均株価の構成銘柄入れ替えに伴うインデックス買い・インデックス売りのポイントを整理します。

1)除外銘柄は売られる、採用銘柄は買われる
2)売買のタイミングは入れ替え実施日の前日の大引け
3)売買取引金額は大きい
4)この取引は機械的に行われるため必然的に発生するイベント

ここまで分かっていて、かつ、入れ替えの対象銘柄が発表されてから実際に入れ替えが発生するまでに1月近く時間があるとなると、この決まり切った取引に便乗するイベント投資が可能ということです。

ただし、上述の通り、このイベント投資が広がる、またはその裏をつこうと考える大口投資家がいた場合など、インデックス買い・インデックス売りが全て吸収されて株価が動かない可能性もあります。この点には注意が必要です。

 

以上、長くなりましたが、日経平均株価の構成銘柄の定期見直しによる入れ替えというイベントに合わせた「イベント投資」のご紹介でした。

2016年8月1日付けの日経平均株価構成銘柄の変更については「日経平均構成銘柄:シャープが除外、ヤマハ発動機が採用」をご覧ください。

関連記事:
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