開業費の償却方法(任意償却を活用して節税)

 

個人事業主が開業の準備期間に要した費用は開業費として「繰延資産」として計上できます。

この「繰延資産」は固定資産の減価償却のように「償却」によって費用計上することになりますが、開業費の償却方法のポイントは「任意償却」という償却方法を選択可能な点です。

任意償却を上手に活用することで節税が可能になります。

開業費の償却方法は2つ

開業費の償却方法は
1)5年で均等償却
2)任意償却
の2パターンを選択可能です。

1)5年で均等償却

固定資産の減価償却でお馴染みの均等償却(5年)が選択可能です。

ただし、開業費の償却方法としてはオススメしません。

後述の「任意償却」を選択した方が節税効果を得られやすいためです。

2)任意償却

「任意償却」を選択すると、好きなタイミングで自由に償却(=費用計上)することが可能です。

例えば、開業初年度は売上も少なく経費も多く、利益が小さくなる傾向があるため、償却を見送ります。そして、2年目や3年目など、利益が多くなり課税額が多くなる年に償却(=費用計上)することで、課税額を抑えることが可能になります。

つまり、所得税の累進課税によって税率の高いレンジに該当する年に開業費を償却することが節税効果が高くなります。

任意償却を活用した節税効果の具体例

開業費(繰延資産)の任意償却を活用した節税効果について、具体例をご紹介します。

まず、下表は平成27年分以降の所得税の税率表です。
#出典:国税庁「所得税の税率」(外部リンク)

課税所得 税率
195万円以下 5%
195万円超〜330万円以下 10%
330万円超〜695万円以下 20%
695万円超〜900万円以下 23%
900万円超〜1,800万円以下 33%
1,800万円超〜4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

 

例えば、開業費が50万円で、課税所得が
・開業初年度:800万円
・2年目:1,000万円
だった場合を考えます。

開業初年度に開業費50万円を償却(=費用計上)すると課税所得が50万円減少するため、50万円に税率23%を乗じた11.5万円の節税効果です。

一方、2年目に開業費50万円を償却(=費用計上)すると、同じく50万円に税率33%を乗じた16.5万円の節税効果となります。

つまり、この事例では開業費50万円の10%に当たる5万円も節税効果に違いが発生しています。

償却するタイミングは確定申告のタイミングに決めてもOK

上述の通り、開業費を任意償却するタイミングを選択することで節税効果を上げることが可能ですが、「いつ、償却するか決めれば良いのか?」については、確定申告のタイミングで問題ありません。

開業費は、開業費として繰延資産に「資産計上」するために領収書などが必要ですが、「償却」はあくまでも会計上の話であり、実態としての金銭や書面の受け渡しは発生しませんので、確定申告のタイミングで「今年は所得税が多い」と判断したら償却すれば良いことになります。

#なお、開業費を資産計上する具体的な仕訳方法は「個人事業主の開業費の仕訳方法(国税局に確認済み)」をご覧ください。私自身が分かりづらく悩んだため、国税局に直接問い合わせて回答を得ています。

開業費の任意償却が可能な期限

なお、開業費の任意償却については本当に「都合の良いタイミングで償却すれば良い」ことになっています。

つまり、開業初年度でも3年後でも5年後でも、さらにその先でも、です。

これは、国税庁の見解として以下の通り具体的に示されています。

繰延資産となる費用を支出した後60か月を経過した場合に償却費を必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

出典:国税庁「償却期間経過後における開業費の任意償却」(外部リンク)

文字通り、本当に好きなタイミングで償却可能という個人事業主に優しい制度設計です。

 

なお、開業費を資産計上するには領収書などが必要ですので、実際に開業する前に「何が開業費に該当するか」を調べた上で事前準備が必要ですのでご注意ください。

#会計に詳しくない方は「開業前に」税理士と相談することをオススメします。

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