法人設立の手順 – 実体験から実践的ポイントを紹介
新たに法人を設立する際の手順について、私自身の実体験から「実践的な」ポイントをご紹介します。
「株式会社 設立」「法人設立」などのキーワードで検索すれば山ほど「法人設立の手順」に関する情報は見つかりますが、その大部分が「法人登記」「設立後の税務・労務関連」の「手続き」にフォーカスされています。
資本金の振込、定款作成、定款認証、法人登記、印鑑証明書・登記簿謄本の取得、国税・都税事務所への届出などなど。
はっきり言って、こんな情報は、専門家に依頼せずに自力で設立する場合を除いて意味はありません。
多くの場合、
・司法書士
・税理士
・社会保険労務士
などの専門家に依頼してしまいます。
この程度の情報は、専門家に依頼して、指示された流れに乗れば良いだけです。
では、私が「実践的」と言うポイントが何か?と言えば、
1)法人登記住所の準備
2)固定電話番号の準備
3)法人のWebサイト、メールアドレスの準備(”.co.jp”ドメインを利用するために)
4)銀行口座開設のための準備
5)法人クレジットカードの発行
など「会社として営業活動を行うための準備」です。
実際に法人を設立して、営業活動を開始した経験があるからこそ知っているポイントを惜しみなくご紹介します。
法人登記住所の準備
法人を設立する際、当然ながら法人の登記住所(本店所在地)を決める必要があります。
この点については多くの情報がありますが、いざ実際に「法人を設立しよう!」と動き始めると「あれ?」となります。
法人を設立する前に、法人の登記住所となるオフィスまたはバーチャルオフィスを借りる必要があるのです。
いったん自宅の住所で登記してから、法人設立後に法人名義でオフィスやバーチャルオフィスを契約して、そして本店所在地変更の登記を行う・・・なんて馬鹿馬鹿しい手順を考えてはいけません。
「地位継承」という手段を用いて、この点はクリアします。
私の場合、バーチャルオフィスでしたが、まず、法人登記可能なバーチャルオフィスと「個人名義」で契約します。
そして法人設立後に、このバーチャルオフィスとの契約について「地位継承」を行い、「個人から法人へ契約を移す」ことを行います。
これは、バーチャルオフィス運営会社、個人、設立法人の3者間での契約(覚書)になります。
つまり
1)個人名義でバーチャルオフィスを契約
2)契約したバーチャルオフィスの住所で法人登記
3)法人設立完了後、個人から新設法人へ当該契約の地位継承を行う
します。
この点は、契約するバーチャルオフィスやオフィスの運営会社と事前に手順を相談しておきましょう。
私の場合、地位継承に必要な書類として、新設法人の登記簿謄本・印鑑証明書が必要でしたので、法人設立後に取得が必要な登記簿謄本・印鑑証明書の部数にも影響がありました。
固定電話番号の準備
東京なら「03」から始まる固定電話の電話番号を法人用として用意するのが一般的です。
流石に今後の商取引のことを考えると、法人にも関わらず「090」や「080」というわけにはいきませんでした。
また、後述の銀行口座を開設する際にも固定電話の番号有無は重要です。
ここで「固定電話」と書いているものの、実際には「固定電話の電話番号」であり、実際に固定電話の回線を引く必要はありません。
「電話転送サービス」など、固定電話の電話番号を用意してくれていて、その番号に着信があると携帯電話に転送してくれるサービスが数多く存在します。
この電話番号の準備は早めに行っておきましょう。
理由は、名刺に記載したい電話番号が決まらないと、結果的に名刺の用意が遅れてしまうためです。
せっかく法人を設立して、挨拶回り等、人と会う機会が多い時期に「名刺がない」のでは余りにももったいない。
名刺が何月何日までに必要か?から逆算して電話番号の準備を進めましょう。
法人のWebサイト、メールアドレスの準備(”.co.jp”ドメインを利用するために)
設立した会社のWebサイト、メールアドレスを準備しましょう。
場合によっては、Webサイトは不要の場合もあるかもしれませんが、大部分の企業ではメールアドレスの準備は必要のはずです。
その際、
・ドメイン名
・Webサイトのホスティングサーバ
・メールサーバ
を決定して、取得・契約・設定が必要になります。
具体的には以下で記載します。
■ドメイン名
ドメイン名とは”abc@company.co.jp”の”company.co.jp”のことです。
このドメイン名を決定する際のポイントは、
・”company”部分の文字列を何にするか?(多くは会社名)
・ドメインは何にするか?(”.co.jp”や”.com”)
です。
例えば、会社名が”株式会社エイブル”だった場合”able.co.jp”というドメインを取得したいと考えたとしても、この”able.co.jp”というドメインは既に不動産会社のエイブルが取得しており、他者は取得不可能です。
ただし、2016年11月14日現在で”able.nagoya”や”able.wedding”等のドメインなら取得可能です。
“.co.jp”で取得したい場合は、”able”を諦め”able-tokyo”や”able-light”等、別の文字列を検討することになります。
このようにドメイン名は空き状況(=取得可能か否か)を見ながら決定します。
■Webサイトのホスティングサーバ
Webサイトを用意する場合、Webサイトのホスティングサーバが必要になります。
有名どころでは、さくらインターネットが提供するレンタルサーバ等が存在ます。
■メールサーバ
専用ドメインのメールアドレスを利用するには、メールサーバと言われるものも用意・設定する必要があります。
これも有名どころでは、さくらインターネットのレンタルサーバもありますし、Google Apps(G Suite)等があります。
■注意点
私の場合、
・ドメインは「お名前.com」で取得
・Webサイトのホスティングサーバはさくらインターネットのレンタルサーバ
・メールサーバはGoogle Apps(G Suite)
という組み合わせにしました。
これは、Webサーバとメールサーバをセキュリティの観点から別々にしたかったためです。
具体的には、将来的にWebサイトのリニューアル等を行う場合、外注先に丸投げするためにWebサーバのアクセス権限を渡す際、メールの内容までアクセス可能になってしまう危険性を排除するため、Webサーバとメールサーバを初めから分けています。
そして、この場合、ドメインの管理でMXレコードやAレコード等の個別設定が必要なため、これら詳細設定が可能なサービス(ここでは、お名前.com)を選択しています。
恐らくIT系のスタートアップを中心に、
・お名前.com
・さくらのレンタルサーバ
・Google Apps
という構成はかなりポピュラーと考えますが、MXレコード、Aレコードの意味や設定方法を知る方は少なく、この構成で実際に動くように設定するのは想像以上に大変でした。
ドメイン、Webサーバ、メールサーバの組み合わせについては、十分に検討して決めましょう。
なお、この準備も終わらないと名刺に記載するメールアドレスが決定せず、名刺の用意が遅くなってしまいます。
#また”.co.jp”ドメインは、法人でなければ取得できないドメインですが、実は「法人設立前」でも取得可能です。「仮登録」という形でドメインを取得し、実際にMXレコードの設定を行ってメールアドレスの動作確認までを法人設立前に私は行いました。
■銀行口座開設のための準備
法人を設立したら真っ先に行う事を強く推奨するのが「銀行口座の開設手続き」です。
要は、新規に設立した会社の銀行口座です。
この銀行口座に売上の入金があり、そこから役員報酬や給与等を支払うため、非常に当たり前ですが「事業を営む上で必須」です。
ですが、実は新規設立法人にとって銀行口座開設は、想像以上にハードルが高いのが現状です。
昔とは異なり、現在はマネーロンダリング等に銀行口座が悪用されないよう、銀行が行う口座開設の審査が非常に厳しくなっており、設立間もない企業は審査落ちしてしまい、銀行口座を開設出来ないケースがあります。
特に東京三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の大手3行(都市銀行)での口座開設の難易度は高いとされます。
私自身、1次審査で落ちました。
「法人設立 銀行口座」「新規法人 銀行口座」「法人 銀行口座 開設」等のキーワードで検索すると審査落ちしたという口コミ・体験談が多く見つかります。
私の場合は取り敢えず「ジャパンネット銀行」で審査が通り無事に口座を開設できたため、法人として初めて発行した請求書に振込先銀行口座情報を「ギリギリ」記載できました。
そして冒頭で、銀行口座の開設手続きを「法人を設立したら真っ先に行う事を強く推奨する」と記載したのは、銀行口座の開設には審査から開設完了まで2週間程度かかると言われているため、銀行口座が必要な締切から逆算すると余裕がないためです。
先述の通り、銀行口座の開設はハードルが高くなっているため、新設法人の場合、普通に審査落ちで口座開設を断られるため、一気に候補の銀行には口座開設申し込みを行う事も現実的には必要かもしれません。一行、一行、順番に行っていては、あっという間に一ヶ月が経過してしまいかねません。
なお、銀行口座の開設には、
・登記簿謄本
・印鑑証明書
の提出が必要なため、法人の登記完了後、申し込み予定の銀行数に応じて部数を取得しておきましょう。
#設立後半年以内の法人の場合、営業実態を確認するための資料(営業資料等)の提出が求められる場合があります。この資料の代わりにWebサイトのURLが求められる場合もあるため、営業実態を示す一つの説得材料としてWebサイトを法人設立と同時に用意しておく事をオススメします。
法人クレジットカードの発行
銀行口座の開設が完了した後で、となりますが、法人クレジットカードも発行しましょう。
法人クレジットカードがない場合、あらゆるクレジットカード決済が個人名義のクレジットカードで行うことになり、何もかもが立替になってしまい「経費精算」となってしまいます。
例えば、先述のGoogle Appsの支払いもクレジットカードですが、個人名義のクレジットカードで行う限り、厳密には経費精算です。
最近はクレジットカード決済が基本となるWebサービスも多く、銀行振込の請求書を発行するには別途数百円の手数料が必要な場合もあります。
このようなケースで毎回毎回、個人名義のクレジットカードで決済していては会計・経理処理が煩雑になりますので、法人名義のクレジットカードを早々に用意しましょう。
流行りのクラウド型会計ソフト(freee、MFクラウド、弥生会計オンライン 等)を利用した場合、この法人クレジットカードの利用データを自動連携することで、法人クレジットカードで支払った経費は自動的に会計処理されるようにもなります。
ただし、法人として実績のない(=信用力のない)設立直後の法人でも発行可能な法人クレジットカードはある程度限られてきますので、事前にしっかり調べておきましょう。
法人設立手続きではなく、営業活動を開始するのに必要な手順
以上、法人設立の「手続き」ではなく、実際に法人を設立して営業活動を開始するのに必要な手順について、私個人の経験からポイントをご紹介しました。
今回は5つの手順をご紹介しましたが、各項目ごとにもっと詳しく解説すべき内容ですので、今後、詳細を解説した記事も用意したいと思います。
私のように設立前後で無駄な労力・時間を費やす方が少しでも減れば嬉しい次第です。
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