クックパッドの経営権争奪戦 – 創業者による株主提案
料理レシピサイト運営のクックパッド(cookpad)が、経営権争奪戦でニュースになっています。
発端は、創業者で株式の44%を保有する佐野氏(現取締役)が、佐野氏以外の取締役の解任を株主提案したことに始まります。
株主提案の理由は何?
どうやら、クックパッド創業者として、佐野氏は「料理(レシピ)」を中心にしたビジネスに集中したいものの、現状のクックパッドは多角化し過ぎている、という経営方針の違いが原因のようです。
以下は、クックパッドのプレスリリースからの抜粋です。
当社株主である佐野陽光は、平成9年に当社を創業して以来、世界中の人々に向けて毎日の料理を楽しみにするサービスを提供したいという目標を掲げ、取締役として企業価値向上に努めて参りました。
しかし、当社は、現在、基幹事業である会員事業や高い成長性が見込まれる海外事業に経営資源を割かず、料理から離れた事業に注力するなど中長期的な企業価値向上に不可欠な一貫した経営ビジョンに大きな歪みが出てきました。
そして、佐野氏は2012年に代表取締役社長を退いて、取締役として海外事業を担当していたようで「基幹事業である会員事業や高い成長性が見込まれる海外事業に経営資源を割かず」という点に繋がっているものと思われます。
佐野氏の主張は合理的か?
佐野氏の主張、つまり
1)クックパッドの会員事業や海外事業に経営資源を割くべき
2)料理から離れた事業に注力することが中長期的な企業価値向上を阻害する
という点は合理的なのでしょうか?
1)クックパッドの会員事業や海外事業に経営資源を割くべき
料理レシピサイトとしてのcookpad自体は、有料会員が150万人を超えており、月間利用者数(ユニークブラウザ)は5,000万を超えている既に巨大メディアです。
個人的には右肩上がりの成長性は「ない」と感じます。
ここに数十億円の新規投資を行っても、とてもROIが合わないと予想します。
また、海外事業はどうなのか?
2月2日に発表されたクックパッドのIRで米子会社の評価損で特別損失を計上することがリリースされています。
その評価損は9億円です。
#現経営陣による佐野氏の提案潰しとして機能しそうです。
また、インドネシアへも進出していますが、現時点で仮にシェアを獲得できても物価の違いを考慮するとインパクトは小さいのではないかと思います。
もちろん、インドネシアは中長期的に(少なくとも相対的に日本よりは)成長性が高い国ですが、5年後、10年後、どのメディア・Webサービスが生き残るかなんて分かりません。
私の考えとしては、佐野氏が主張されるような既存事業や海外展開へ資本投下するよりも株主還元でもして下さい、です。
2)料理から離れた事業に注力することが中長期的な企業価値向上を阻害する
この点は、激しく同意です。
みなのウェディングへの出資など、シナジーも疑問ですし、どうせバリューアップして売り払うんでしょ?という感じの投資も含め、大きくなるほど、多角化するほど、収拾がつかなくなるのではないでしょうか。
そして、ネット関連の数億〜数十億円規模の小さな複数事業を管理するのは、管理コストがかさむ一方、ノウハウ不足も懸念します。
小規模版コングロマリットなんて10年後に生き残れるイメージが湧きません。
金が余っているなら大人しく自社株買いか増配でもして下さい。
また、佐野氏の主張が全面的に取り入れられたとして、既に拡大してきた新事業をどうするのか?も疑問です。
今、切り捨てようとしても買収額以下でしか売却できず、多額の特別損失を計上する懸念があります。
そして大株主・創業者・取締役である佐野氏のスタンスが明らかになり、クックパッド及びグループ企業の社員のモチベーション低下も気になります。
「佐野さんは、このビジネス、やらない方が良いと思ってるんだねー」と社内では話になるのではないかと。
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